shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

真実の瞬間

 子供の感性は鋭くて、記憶にも良く残るみたいで
子供時代の印象的な話って、沢山覚えています。
最近では、何をみても「ふーん。そうか。」てなもので、
印象に残らないから、すぐ忘れてしまうんですけど。


これは、私が小学校4年生だった頃のお話です。
小学四年生っていうと、私はそれ程でもなかったのですが
男の子と女の子が反発しあう時期の様でして、良くもめ事が起こりました。
 その日もそんな小さな「事件」が起こりました。
学級会が開かれて、先生が「裁判」を始めました。
男の子と女の子の言い分をそれぞれ発表させて、どうしてその「事件」が
起こったのか、どちらが悪かったのかを皆で話しあう事になりました。


 二人の話しを聞いて私は即座に、これは男の子の方に非があると分かりました。


「では一人ひとり、席の順番に、どちらが悪いのか言ってもらいます」
廊下側の一番まえの席から順番に一人ずつ、先生は答えさせました。
私は大体クラスの真ん中位の場所でした。
 私は当然、みんな「男の子が悪い」と言う筈だと思っていたのですが
驚いた事に事実はそうではありませんでした。
男の子はみんな「女の子が悪い」と言い、
女の子はみんな「男の子が悪い」と言うのでした。


 一列目が終わり、二列目が終わりましたが、みんな同じでした。
さて、困った。。。。
ここで自分だけ、「女の子が悪い」と言えば、何が起こるか?
子供心に私は計算しました。
きっと、男の子達から総スカンを食らって、ひどい「一生」(?)を送る羽目になる。
「正義」を行うのは大事な事かも知れないけど、その結果自分が不幸になっても
良いのか?その覚悟が出来るのか?
まてよ、そもそもこんな「事件」、私には関係無い事で、こんな事で私が
ひどい目に遭うのはバカバカしいよね。。。?


 自分を誤魔化し、良心をすっかり抑え込んだ頃に、私の番が回ってきました。
胸がドキドキしましたが、思い切って言いました。
「・・・女の子が悪いと思います・・・。」
言った後席に着くと、どっと脱力感に襲われました。
良かった。ともかく終わったんだ。
ぼんやりと、罪悪感と安堵感のミックスを味わいました。
 心に余裕が出来てくると、その後の人たちの事が気になってきます。
聞いていると、やっぱりみんな同じ調子の連続です。
私はますます、安心しました。


 当時、新しい友人で、とても頭が良く大人びた男の子がいました。
「彼は何と答えるのだろう?」
少々意地悪な気分で、私は期待しました。
彼は当然「答え」を知っているに違いない。
彼はどう答えるのだろう?
彼が私と同じ選択をするのを期待して待ちました。


 とうとう彼の番が回ってきました。
彼は不機嫌そうに立ち上がると、さもつまらなそうに
「男が悪いです」
と言うと、無造作に座りました。


その時の私のショックは大変なものでした。
目の前が真っ暗になりました。
生まれて初めて、私は「自己嫌悪」をたっぷり味あわさせられたのでした。
「僕は何という・・・・つまらない奴なんだ」
彼をまともに見れない位恥ずかしく、また、彼を羨ましいと思いました。


それ以来、こんな思いは二度としないように生きてきましたが、
彼の様な勇気を私は持てているのかどうか・・・甚だ心もとない気分になります。


もし、タイムマシンが出来たら、是非もう一度見てみたい、
私の記念すべき分岐点のお話でした。