shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

絶体絶命の日々 (今はなき株式会社Mの物語 4/16)

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今日はいいお天気でした。

見上げると目も覚める様な青空と紅葉。 

 

 

 今はなき株式会社Mの物語も4回目、まだまだ壮絶な日々は続きます。

某年4月に始まった大阪での「社会人研修」。

入社式初日は46名でしたが、翌日は半減して23名に。。。

それからもジワジワと人数は減っていきました。

 

4月の終わりには18名。

5月の終わりには15名。

6月の終わりには10名。

7月の終わりには8名になっていました。

 

4月を乗り切った18名は、みんな

「こうなったら意地でも生き残ってやる !」

という気合に満ちた人たちでしたが、

それでも、一人、また一人と抜けていきました。

 

或る人は、居眠りしている所を社長に見咎められ、

或る人は、学習の習熟度が低いため、

或る人は、親御さんがこの異常な研修に気づいて、

或る人は、寝坊して遅刻したため、

或る人は、研修の厳しさに耐えられず、

ある人は、体を壊して。。。

 

連日の過酷な運動、短い睡眠時間で、

講義を短期間に記憶し、社長からのチェックに適切に答えられなければ、

即、首を言い渡されるという極度の緊張感の中、

研修生達は大変なストレスに晒されていました。

多大なストレスの中、研修生達はそれぞれ必死で脱落しない様に踏ん張っていました。

 

強烈なストレスと過労で、私は待機中に良く幻覚を見ました。

ノートを書いていると、視界のギリギリの所が虹色に見えるんです。

この虹色を見つめると、ガクッと意識を失い、ハッと気づくんです。。。

あれは何だったのでしょう。。。?

 

 6月の或る朝、寮を出るとき、ベルの音が聞こえた様な気がしました。

思考力が衰えているので特に何を考えるでもなく、出社しました。

同じ寮の、一番熱心でリーダー格だった研修生Sさんが出社していませんでした。

 

「ああ、あのベルはSさんの目覚ましだったのか。。。」

 

遅れて出社してきたSさんに、社長は激怒し、

彼を許しませんでした。

彼は土下座して泣きながら何度も

「申し訳ありませんでした。どうかお許しください!」

と絶叫していました。

今でもあの声が耳に残っています。。。

 

 

6月が終わる頃、社長はパタリと研修を行わなくなりました。

 

「君たちに研修しても、ちっとも効果が出ない。」

と言われ、研修室に1日中放置される日々が続きました。

 

この時点まで生き残った研修生たちは、

「社長は絶対」になっていましたから酷く慌てました。

 

「どうしよう?」

「どうしたら研修内容が身につくんだろう?」

「みんなで研修内容を復習しあって、不足している部分を補えば良いんじゃないか?」

「お互いの足りない所を修正しあえば良いんじゃないか?」

社長にこの事を言って、「お互いを指摘しあう」事の許可をもらいました。

 

 

 後で知りましたが、株式会社Mの研修は毎回このパターンで進む様でした。

最初に「講義」をする。

暫くして、このままの状態では「講義」が出来ないと言って放置する。

研修生達は慌て、混乱し、お互いを指摘し合って「学習効果」を高めようとする。

この中で、イマイチ「洗脳」の度合いの低い研修生達はドンドン淘汰されて、

より社長への忠誠心の高いメンバだけが生き残っていく。。。

こんな風に研修は進む様なのです。

典型的な洗脳プロセスです。

 

 

研修はめでたく、「相互に指摘しあう」段階に達した訳ですが。。。

どうやら私はこの研修生の集団の中で、「洗脳」度合いが一番低かったみたいで(苦笑)

研修生のみんなから、「指摘」のターゲットにされました。

 

「何故shobunoさんは◯◯しないんですか?」

「いや、思いつかなかったから。。。」

「何故思いつかなかったんですか?」

「え。。。?(悩)」

 

何故思いつかないのかと言われてしまうと、答えなど出る筈が無いんですが。。。

その時は随分悩みました。

 

毎日毎日、朝から晩まで。。。

7月〜9月ぐらいまでずっと。。。

連日、「何故できないのか?」「どうしてそう思えないのか?」

「何故?」「何故?」「何故?」「何故?」。。。

 

みんなから、一挙手一投足監視されて、追求され続けました。

 

流石に相当な頑固物の私も、頭がおかしくなってきます。。。(苦笑)

人間は、周囲の人々との「距離感」で自分を定義するものです。

当時接する事ができる唯一の周囲の人々(=研修生)が、

私の行動を連日ことごとく否定するのですから、

自分のアイデンティティを保つのが難しくなってきます。

「私は一体何なんだっけ。。。?」

 

「ああ、社長との面接のときに言っていたのはコレだったのか。。。」

 

追求されつつ、冷静な自分も少しだけ残っていて、

「ああ、ここで私が挫けて会社を辞めたりしたら、

 研修生の集団は次の「獲物」を見つけてまた同じ事をするだろう。

 そうやって、次々とお互いを潰し合って、

 研修生は居なくなってしまうにちがいない。

 ここは、私が何とか支えなければ。。。」

なんて事も考えていました。

 

「shobunoさん、あなたはこんなだから、社長は研修をして下さらないんです。

 あなたと一緒に仕事は出来ません。すぐに会社を辞めてください!」

なんて何度も言われました。

「いや、あなたこそ、仕事をし始めたら、真っ先に自分から会社を辞めるタイプ

 だと思いますよ。。。」

こんな事を言い返すから、余計に追求されるんですね。。。(笑)

(残念ながら、この「予言」は的中してしまいました。)

 

研修生のみんなも、頭がおかしくなっていました。

或る研修生は、何を思ったのか手元に有った紙片をライターで燃やして

皆を驚かせました。。。

その時も、その彼に

「どうしてそんな事をしたんですか?」

「さあ。スミマセン。何だか頭がおかしくなっていたんです。」

「。。。仕方有りませんね。じゃ、次はshobunoさんを追求しましょう。。。」

(私)「え?!(苦笑)」

 

 

連日「追求」の集中砲火を浴びて、自分が何なのか見失いそうになりながらも、

何とか私は「相互指摘」の時期をしぶとく生き抜く事ができました。。。

 

 

7月に終わる予定の研修でしたが、既に9月になっていました。

バブル崩壊の影響は、株式会社Mにも迫っていて、

会社は研修どころではなくなりつつありました。

 

研修は一向に終わる気配がなく、

永遠に続いてしまうんじゃないかと思っていました。。。