目の前に一本の線が見えました。
「地平線。。。?」
その線は、筆で描いたような強弱がある線でした。
その線を見つめていると、だんだん脈打ってきて、
うごめきながら波の様な形になり、
やがて波が高くなって、
波が渦巻き模様の様になって、
上も下も分からなくなって。。。
すうっと真っ暗になって、何も分からなくなりました。
何だか、安らかな気持ちになったのもつかの間。。。
突然、顔の左側に激痛が走りました。
「おい! shobuno! 何やってんだよっ!!」
その声にハッと気づきました。
ここはグランドで、今日は株式会社Mの球技(ソフトボール)大会。
私はバッターだった筈ですが、よく覚えていません。
どうやら、バットを振ってヒットを打って、
走ろうとした瞬間に、貧血か何かで気を失ってしまったようでした。
倒れる瞬間、手を付く事もできず、
顔から地面に突っ込んだ様でした。
慌てて立ち上がると、
「す、スミマセン。転んでしまいました(笑)」
と苦笑いを浮かべて、塁へ進みました。
「全く、shobunoはとろいなぁ。。。(苦笑)」
気を失っていたのはそれ程長い時間では無かった様です。
。。。良かった。誰にも気づかれていないみたいだ。
あとで鏡を見てみたら、左の目の横からアゴにかけて擦り切れて血が出ていました。
と、とりあえず、目とか無事で良かった。。。^^;
生まれて初めて気を失いました。
気を失う前の数分間の記憶が欠落していますので、
何が起こったのか、はっきり描写する事が出来ません。
冒頭の、一本の線が揺らぐ映像だけはハッキリと覚えています。
案外、死ぬ時ってそれ程苦痛はないのかも知れないなぁと思ったりして。。。
連日、深夜残業、徹夜作業の連続でしたが、
株式会社Mの社内行事は、きっちり厳しく行われました。
皆、厳しい研修を生き抜いてきた社員達です。
何より会社優先の猛者揃いでした。
社内行事を幾つか描写しましょう。。。
◇球技大会
年に二回、大阪で開催されました。
東京メンバーは、朝イチの新幹線(6:00位に発)に乗って移動しました。
始発に乗れない所に住んでいる人は、事務所に泊まったりしていました。
新幹線の中では、全員爆睡。(苦笑)
社内行事は「全員参加」が義務付けられています。
でも、プロジェクトの状態によってはどうしてもその日も仕事に行かなければ
ならない人達もいます。
そういう人達は、球技大会の途中で運動着からスーツに着替えて、
一列に並び、全員に向かって大きな声で、
「◎◎プロジェクト、客先対応が有りますのでこれから◯◯へ行ってきます!」
と叫びます。みんながそれに応えて大声で
「いってらっしゃいませ!!」
と叫び、拍手で送りました。。。
ハタで見ていた人々には、さぞ奇異な光景に映った事でしょう。。。(笑)
球技大会では、全員、運動ができる服装をしていました。
普段、鬼の様に君臨していた上司たちが、スーツを脱ぐと、
案外普通のお兄さんみたいで、不思議な感じがしました。
◇社内旅行
何年に一回、全社で温泉旅館へ一泊旅行をしました。
有馬温泉とか、石川県の加賀屋旅館とか、豪勢な所へ行きました。
しかし。。。株式会社Mですから(苦笑)、大変苦痛に満ちた旅行でした。
宴会は深夜まで延々と続き、終わっても上司や先輩社員の「お話」を
お聞きしたりしなければならず、寝る事もできませんでした。。。(汗)
有馬温泉の時なんて、温泉に浸かる暇も全く有りませんでした。
「金泉って何?」(涙)
◇全社会議
毎月一回、土曜日に会場を借りて、(東京、大阪別々に)とり行われました。
各部の業務報告、プロジェクト報告、社長からの訓示などが行われました。
これをすることで、会社への帰属意識や、研修時に叩きこまれた「洗脳」効果
の補強などが行われました。
普段なかなか会えない社員と会って、話をしたり、各種報告を聴く事で
自分が株式会社Mの一員である事を強く意識させられ、
これからどういう考えで仕事に向かえば良いのかなど考えさせられました。
◇朝礼
毎週、月曜日の朝に社内で行われました。
上司の訓示、プロジェクトリーダーからのお話、
そして最後に「元気一発」(?!)
元気一発とはこんな感じでした。
毎週、順番で前に出て、軽い話をした後に行います。
「(前略)。。。という訳で、私は仕事に於いて、要所要所の報告の重要性を
実感しました。
という事で本日の「元気一発」は、私の方で、
「今週も、要所要所できちんと報告をして頑張るぞ!」と言いますので、
皆様は拳を握り、天に突きあげて
「エイエイオー!!」と続けてください。」
「では。。。今週も、要所要所できちんと報告をしてがんばるぞ!」
(全員)「エイエイオー!!」
みんなの意識を一つにまとめる教育、社長や上司は絶対に従うべきという強い意識付け。
みんな、同じ価値観を持って、会社の為に必死で突き進む社風は、こうして培われ強化されました。
上司の命令は、絶対服従。
一度命令が下れば、体力が尽きるまでやり続ける。
反論なし。
手抜き無し。
全ては組織の為、
ひいては顧客満足のため。
仕事に於いては「個人的な事情」を一切忘れろ!
「社内行事」も、勿論「仕事」でした。
仕事に於いて、この様に価値観が揃っているという事は、
非常に強力な強みになりました。
他社の人に比べて、圧倒的に仕事の量、精度が高い。苦しい開発でも決して逃げない。とても頼りになる会社だと評判になった様でした。
自分を殺し、強烈に無理が出来る人が脚光を浴び、みんなを牽引し、
やがて、その強烈な無理 故に、そういう人から先に燃え尽きて、
会社を去っていく様な。。。そんな会社でした。