shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

木龍うるし

 ぼんやりしながら、遅めの朝食をモソモソ食べていると、

テレビで「ふるさと再生 日本の昔ばなし」というのが流れました。

どこかで見た様な、だけどちょっと安い感じのオープニング、

男性(柄本明)と女性(松金よね子)の二人の声だけで、

子供から老人までの声を演じてしまう手法。

そしてどこかで見たようなキャラクターが出て来る限りなく微妙なエンディング。。。

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思わず

♪ 坊やぁ〜良い子だネンネしな い〜まも昔も変りなく〜 ♪

 

と歌いたくなるような番組なのです。。。(苦笑)

始めの頃は、二人の声もぎこちなくて、

何だかなぁと思っていたのですが、最近は大分上手になってきて、

本物(おっと (^_^;)と遜色ない感じにまでなってきました。。。

 

今日の演目は。。。「漆の兄弟」

 

有る村にうるし職人の兄弟がいました。

兄弟は、山に生えているうるしの木からうるしを取って、

器に塗って、商売していました。

しかし、うるしは沢山採れませんでしたので、兄弟は貧しかったのです。

ある日、兄弟は川底に溜まっている上質なうるしを大量に発見します。

兄弟は、うるしを採って沢山器に塗って大儲けしました。

しかし、欲が出た弟が、うるしを独り占めする為に、

木彫りの龍を掘って、川底に沈めます。

そうとは知らない兄は、川底に潜って龍がいるのを見てびっくり仰天。。。

これではうるしを採る事ができないので、兄は京都へ出稼ぎへ行ってしまいました。

これで、うるしを独り占め出来ると喜んだ弟は、

川底に潜ったのですが、たっぷり有った筈のうるしは無くなっていて、

巨大な龍に生命が宿って、弟を襲ったのでした。

命からがら逃げだした弟は、兄に全てを打ち明けて謝り、

また元の様に一緒にうるしを採って生きる事にしたのでした。

 

とまあ、こんな感じの話でした。

「あれ? これって「木龍うるし」じゃない?」

 

「木龍うるし」と言えば、今となってはちょっぴりホロ苦い思い出があります。

 

 小学校5年生の頃、私は近所の友人のM君に誘われて、学習塾に通う事になりました。

当時の私と言えば、私立中学へ行くつもりも全く無かったし、

成績も特に気にする様な事も無かった筈なのですが、M君のお母さんが私の母に頼んで

何となく行く事になったのでした。

私もいいかげんなもので、

「塾なんて、どんな所だろう?」

とか、意外と乗り気でした。

 

その塾は団地にありました。普通の民家でした。

先生は、元教員のおばさん。とても優しい先生でした。

ドアを開けるとすぐ玄関で、私達は靴を脱いで2階にある「教室」に行きました。

教室は畳の部屋で、ちゃぶ台が幾つか並べてあって、そこに座って勉強しました。

教室に着くと私たちは、教科書とノートを先生に渡します。

先生は、進度を見ながら、手書きでノートに問題を書いていきす。

私達はノートを受け取って、書いてもらった問題を解いていきます。

全部できたら先生にノートを提出して、採点してもらって家に帰るという。。。

生徒は常時10人ぐらいいたでしょうか。。。?

ちょっと変わった学習塾でした。

 
私とM君は、一緒に塾に行き、ほとんど一緒にノートを提出し、
一緒に帰っていました。
難しい問題が出た日は、
 
「これはちょっと難しいぞ。。。さぞやM君、苦労している事だろうな。
 大丈夫かな?」

私の心配をよそに、私がノートを提出すると、M君もすぐに提出しました。

「?! M君ってこんなに出来たんだ。。。(←失礼な (^_^;)」

簡単な日も、難しい日も、来る日も来る日も、私とM君は殆ど同時に

課題を終えて、同じ様に良い感じの成績で、一緒に帰りました。

 

「何だか変だぞ。。。」

私の中に疑惑が積もっていきました。。。

 

ある日、私はその疑惑を解消すべく、ある事を試みる事にしました。

 

その日の教科は「国語」でした。

題材は「木龍うるし」。

弟が仕掛けた木龍を見て、兄がびっくり仰天するシーンです。

水のゆらぎで、木龍がゆらゆら揺れて、まるで生きている様に見えたという所で、

先生からのクエスチョン。。。

 

「どうして、兄は木龍が生きている様に見えたのですか?」

 

私はノートに

「目が悪いから。」と書きました。

さり気なく、Mくんのノートを盗み見ると、やっぱり。。。

「目が悪いから。」と、堂々と書いて有りました。

 

私は可笑しくて可笑しくて、堪えきれず、

「と、トイレ行ってきます。。。」

と、その場を去りました。。。

トイレの中でひとしきり笑った後、気持ちを整えて席に戻りました。

残りの問題をチャチャっと済ませて、木龍うるしの例の解答を、

「水の加減でゆらゆら見えたため。」

と素早く書きなおして、先生に提出しました。

M君はそんな事とは知らず、そのまま提出して、

先生から大目玉を受けていました。。。

 

 

帰り道。M君が私に、

(M)「僕さあ、shobuno君の答案をずっと見て書いていたんだよね。

    今日もそうして、それで怒られて。。。気づいていたんだね?」

(shobuno)「。。。う、うん。」

(M)「ゴメンね。」

(shobuno)「いや。僕こそ、こんな事しちゃって。。。」

(M)「いいんだ。 ありがとう。 もう二度としないから。」

(shobuno)「うん。。。」

 

 

木龍うるしを思い出すと、ちょっとほろ苦い気分になります。。。

まるで私は、主人公の弟みたいですね。。。(苦笑)