shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

組織つぶし (今はなき株式会社Mの物語 12/16)

会社を変えるんだ。。。

 

 当時の私はそんな事を大真面目に考えていました。

何回かプロジェクトリーダーを経験し、部下がたくさん出来ました。

どうしたら良いチームが出来るのか、彼らと一緒に考えて実践してきました。

 

 リーダーはタスクを定義し、メンバーを配置し、マイルストーンを決め、

問題を管理し、チームのスケジュールをキープする。

メンバーは、それぞれのタスクを実行し、自分の立場で見つけた問題を

リーダーに素早く上げて、考えてもらう。

リーダーは、メンバーから上がってくる情報をきちんと受け止めて、

チームを正しい方向に導く。

 お互いの間に躊躇や、遠慮が発生しない様に、コミュニケーションが滞らない様に

阻害する原因を取り除く。

コミュニケーションの阻害の最大の原因は、「相手に対する不信感」です。

相手が自分の事を信頼している。

自分は相手の事を信頼している。

そういう信頼関係のベースを築く事が、コミュニケーションを円滑する基本だということ。

 

 経験の中から、こういう事が、チーム形成に必要な事だと理解しました。

時には、

「自分の言う事が正しくて、メンバーは何も分かっていない。

 なんでも良いから、私の命令を素直に実行しろ!」

と言いたくなるシーンもありました。

その度に、

「ああ、S主任はこういう気持ちだったんだ。。。」

という事が身に染みて分かりました。

そして、そういう事をそのまま言ってしまうと、

メンバーがどんな気持ちになるのかを思い出して、ぐっと堪えました。

 

「shobuno、キミを主任に任命する。」

 

ある日上司のN主任から、そう告げられました。

「えっ?! はい。ありがとうございます。」

「主任の選考会議で、キミは満場一致で決定だった。

 意外とキミは人望が厚いんだね。。。」

「?!」

 

 私は「主任」という肩書きを頂き、ますます大胆に組織づくりを行いました。

私のプロジェクトのメンバーは、生き生きと私に対して意見し、

私も率直に聞き、正しい事はその場で取り入れて自分の考えとし、

間違っている事は丁寧に正しました。

 (私の)プロジェクトを離れても、元メンバー達は新しいリーダー達に同じ態度で

望み。。。

新しいリーダー達はタジタジになりながらも、対応している様でした。

中には旧態依然としたリーダー達もいて、

「部下のくせに上司に逆らうとはけしからん!」

という事も有った様でしたが、

全体としては社風が、少しづつ着実に、いい方向に変わってきた様な感じがしました。

 

 

そんな事が感じられる様になってきたある日。。。

月に一度の全社会議で、社長がこんな事を言い出しました。

 

「どうも、会社の組織を下から壊そうとしているヤカラがいる様に思える。

 組織の改革は上からの指示で行うべきである。

 「組織つぶし」を考えている者を私は許さない。」

 

ひぇ〜。。。組織つぶしを企んでいるのは、この私だけど。

それにしても、さすが社長。こんなに早く気づくとは。

でも、私が首謀者とは絶対に気づかないだろう。。。

「理想的な組織」の在り方を示しはしたものの、

「組織を改革せよ!」とは一言も言っていないんだから。。。

そんな風に思っていました。

 

 本当の所はどうだったのでしょう。。。?

私の知らない所で、本当に「組織つぶし」運動をしていた人がいたのでしょうか。

それともやっぱり、私が企んでいた事が「組織つぶし」として映ったのでしょうか。

今でも謎ですが、私は自覚的に「組織改革」を下から行おうとしていましたので、

やっぱり「組織つぶし」の少なくとも首謀者の一人であったと言えるでしょう。。。

 

「組織つぶし」について、社長からの話はこの後、何度も全社会議で

話題になりましたが、情勢は変わらない様でした。

しかし、そんな事を気にしている場合ではない様な事態が勃発しました。

 

上司のM主事(昇格しました)から突然、

「shobuno、来週から大阪へ異動してくれ。」

と言われました。

「ええっ?! ど、どうしてですか?」

「大阪のプロジェクトが火を吹いていてな、

 キミじゃないとリカバリ出来ないんだ。。。」

「。。。妻が妊娠初期で、出来れば行きたくないんですが。。。」

「ごめん。行ってくれ。」

「うう。。。」

 

 妻と涙の別れ(うそ。(^_^;)をして、大阪へと向かいました。

大阪のプロジェクトは本当に酷い状態で。。。

30人ぐらいのメンバーが1つの部屋で、連日夜中の12時過ぎまで

ダラダラ開発している状態でした。

 私はこのプロジェクトと同じお客さん、同じシステムを開発した事がありまして、

業務や開発のコツを熟知していました。

 着任早々、みんなを集めて業務説明や、開発のコツをレクチャーしました。

プログラムをタイプ別に分けて、タイプ別に担当者を割り当てて、

似たようなプログラムを作らせる事で開発効率を高めました。

スケジュールを引き直し、お客さんと調整をしたり、

開発メンバーの間を走り回って、問題の早期解決や情報の収集に努めました。

気がつくと、私は大阪チームの事実上のリーダーになっていました。

 

 「大阪」といえば、以前のプロジェクトで痛い目に遭っているので、

良い印象を持っていませんでした。

ろくでもない人達なんじゃないか。。。?

 しかしながら、流石 株式会社Mです。

大阪の社員も、一緒に働いてみるとマジメで一所懸命な、気持ちの良い人達でした。

やっぱり、組織の出来によって、人の印象は全然変わるんだなぁと、

認識を新たにしました。

 

 3ヶ月間みっちり働き、プロジェクトが見事に立ち直った頃には、

私はすっかり「大阪の人」という感じになっていました。。。

 

「そろそろ、東京に戻って来てもらわないと困る。」

 

と言われた時には、ちょっと嫌な感じがした程でした。

大阪メンバー達からも、とても惜しまれました。。。

「shobunoさんから受けた御恩は一生忘れません。」

と言われた時には、ちょっとホロっとしてしまいました。。。(笑)

 

 

3ヶ月半振りに、東京に戻りました。

そこで待っていたのは、衝撃的な状況でした。。。

 

 

ここで、次回に続くとすると、非常に良いヒキなのですが。。。

残念ながら残り回数が有りませんので、このまま続けます。(笑)

 

 

 何と私の居ない間に、私の(可愛い)元プロジェクトメンバー達が、

軒並み退職していたのでした。

特に最初にリーダーになった時のプロジェクトメンバー 達や、

前回の物語で大活躍してくれたU君。彼は私の意図を非常に良く理解してくれていて、

彼がいれば、会社の改革は上手くいくだろうと思っていたのですが。。。

 

私が手塩にかけて育てた人々が、突然みんな居なくなってしまいました。

とてもショックでした。

 

もう一度最初からやり直す。。。?

いや、きっと同じ事になってしまうでしょう。

だったら、そんな事をしない方が良い。。。

 

私は、組織改革の企て(くわだて)を断念してしまいました。

 

 

それから数ヶ月後の全社会議で、社長から

「組織つぶしの企ては終わった。」

という話がありました。

 

私はそれを聞いても、もはや何も感じなくなっていました。。。