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shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

SE研修 (今はなき株式会社Mの物語 13/16)

今はなき株式会社Mの物語

 前回の「 組織つぶし」を読みなおしてみて、やっぱり私の組織改革作戦は

バレていたのかも知れないと思い直しました。

だとしたら、実に巧妙に作戦を封じたものだと思います。

 

 ともあれ、「組織の本質は人である」と思っていた私にとって、

一緒に改革に取り組めそうな「人」を殆ど失ってしまった事は大変な痛手でした。

人がいなければ、組織の改革など出来る筈も有りません。。。

私は積極的、意図的に株式会社Mを変えてやろうという考えを一旦諦める事にしました。

 

しかし表面的には特に変わる事もなく、これまでと同じ様に、

プロジェクトリーダーをしたり、メンバーをしたり、仕事に打ち込んでいました。

 

10年生を過ぎた頃、私は上司に「SE研修」を受ける様に命じられました。

 

「SE研修って何ですか?」

「10年生向け社員の為に我社が用意している研修プログラムだ。

 プロジェクトの運営スキルとか、お客さんとの折衝スキルを付けるのが目的だ。」

 

。。。今まで、そんな研修が有るだなんて全然知らなかった。。。

今更研修だなんて、ちょっと嫌だな。。。

 

 研修は大阪のとあるホテルで、2泊3日のスケジュールで行われました。 

広いホールに集められた受講者は20人ぐらい。

いずれも東阪から集まられたプロジェクトリーダークラスの人々でした。

それを5人づつチームに分けて、各チームに部長クラスのオブザーバーが付けられました。

講師役のマネージャに、お客さん役の主幹、秘書役の社員(大阪の同期)。

その他、部長クラスの人々が見守っていました。

全員株式会社Mの社員でした。全部で合わせて30人前後だったかな。。。?

 

これから何が起こるんだろう?

 

ちょっと緊張気味の私達を相手に、早速 研修が始まりました。

初日、朝の9時ごろ、講師役Iマネージャが柔らかく丁寧な口調で語りかけてきました。

 

「集団の中で物事を決める為に有効な手段として会議を行います。

 会議を有効なものにする為に必要な事として

 「会議の三原則」というものを意識してください。

 三原則とは 「参加」「共有」「集中」のことです。

 各参加者が、傍観者ではなく、会議に参加し、話しあっている議題、

 会話の内容を皆で共有しなければなりません。

 会議中は今話している内容のみに集中し、成果を出さなければなりません。

  皆さんには、とあるシステム会社に所属する社員になってもらいます。

 各チームに分かれてもらいましたが、それぞれが一つの会社と考えてください。

 これから皆さんは、鶴亀商事という会社に行ってもらい、

 この会社が抱えている問題をヒアリングし、問題点を明らかにしてもらい、

 業務を改善する為のシステム開発を提案してもらいます。

 この3日間の研修の最終日には、各チームによるプレゼンを行なってもらい、

 結果を評価したいと思います。

 先ずは、各チームで会議を行なってもらい、

 役割分担やスケジュールを決めてもらいましょう。

 鶴亀商事はこのホテルの一室にありますが、

 各チームに配った携帯で連絡が取れます。

 では、頑張ってください。」

 

 私たちは状況を良く飲み込めず戸惑いました。

しばらく皆で押し問答をしていると、オブザーバー役の部長が見かねて、

「早く始めろよ! 取り敢えず自己紹介をせんかい!」

言われるままに、おずおずと自己紹介をしました。

 

「先ずは大体の手順を決めないといけないね。。。」

 チームの中で一番年長の社員(以降リーダーとします。)が話しはじめました。

 

話し合いの結果、こんな手順で行なおうという事に決まりました。

・先ずは鶴亀商事に行き、業務や困っている事を聞き業務フローにまとめる。

・業務フロー上に問題点を書き出す。

・コンピュータシステムを導入した後の業務フローを書き、

 改善したポイントを説明する。

・システム開発の規模やかかる費用の概算を提示する。

 

「早速、鶴亀商事にアポを取らないと。。。」

私が携帯で電話しました

(秘書O社員)「はい。鶴亀商事です。」

(私)「お世話になっております。私、A開発のshobunoと申します。」

(O)「ああ、いつもお世話になっております。」

(私)「御社の業務に付きましてお教え頂きたいと思っております。

    お忙しい所申し訳ありませんが、お時間を頂けないでしょうか」

(O)「はい。良いですよ。今から10分後でお願いできますか?」

(私)「はい。よろしくお願いいたします。」

 

早速、我々Aチームはノートを持って、鶴亀商事のある部屋に向かいます。。。

 

ピンポーン

(O)「はい。」

(リーダー)「A開発から来ました者です。」

(O)「はい、お入りください。業務部長のYがお話させて頂きます。」

 

(Y)「いやぁ、良く来てくだはりました。。。」

いつも強面のY主幹が、鶴亀商事の業務部長さんになりきって業務の説明を始めます。

注文の流れ、仕入れの流れ、伝票の流れ、入庫、出庫の流れ、

どういう所に困っているかなど、リアルに説明してくれました。

 

 チームの部屋に持ち帰り、みんなで今聞いた話をまとめ、

大きな模造紙に、付箋を使って業務フローを作り始めました。

いつ、誰が、何処で、何をするのか。。。

人、モノ、金の動きはどうなっているのか。

無駄な流れはないか。。。?

 

 話し合ううちに、メンバーのキャラクターが明らかになってきました。

余り意見を言わない人とか

積極的に話をするけど、人の話が聞けていない人とか

今話している内容と違う事を言ってしまう人とか。。。

まさに、「参加」「共有」「集中」が出来ていない状態でした。

こんな状況なので、会議の生産性は低く、なかなか前に進みませんでした。

 

私はと言えばイマイチ周囲の状況について行けず、話しを必死に聞いているだけ、

外から見れば、妙に冷めていて「参加」出来ていない感じに見えていたと思います。。

 

業務フローを描きながら、

「あ、この業務から次の業務への伝票の流れが分からない!」とか

「ここも、聞けていない!」とか

そんな箇所が何個も出てきて、慌ててアポを取ってヒアリングをし直したりして、

どうにかこうにか業務フローが出来上がったの頃には 、夜中の12時を回っていました。

 

 

2日目

鶴亀商事に行って完成した業務フローを見てもらいました。

(リーダー)「えーと、ここはこうなって。。。つまり。。。あれ?」

説明しながら詰まってしまいました。

(Y)「どうしました?」

(リーダー)「えっと。。。」

 

カチッ。。。

私の頭に中のスイッチ(?)が入りました。

「研修」をしているという意識が消え、今、(本物の)お客さんの所でシステム開発の

相談をしているんだという「モード」になりました。

(私)「えっと、つまりですね。。。ここから、伝票が流れるのですけど、

    ここの処理が無駄になっているため、後でこれをしなければならなくて、

    だから、ここをこう変えたら、効率が良くなるんではないかと。。。」

(Y)「おお。確かにそうかも知れませんね。」

 

それからは怒涛でした。。。

部屋に帰ると、業務フローを見直して、問題点を明らかにし、

改善後の業務フローを描き始めました。

どの部分にコンピュータ・システムを入れるのか、

システムのインプットは何か、

システムのアウトプットは何か、

ロジックはどうなるのか。

いつもの仕事モードになって業務フローを描きました。

 

書きながら、矛盾に気づいたりして、

(私)「ああ、これじゃあ、バグっているよ。。。(涙)」

。。。どうにか、改善後の業務フローがまとまったのは、

深夜3時を回っていました。

体も脳もクタクタで、そのままベッドに倒れこみました。

後で聞いた話では、2日目の夜は完徹したチームも幾つか有ったそうです。

 

 

3日目

朝、部屋に付いていたテレビを付けてみると、

或るホテルで殺人事件が有ったというニュースが流れていました。

良く見ると、どこかで見た事のあるホテルが映っていました。

 

「えっ?! これって、ここじゃないの?」

「。。。ホントだ (^_^;」

 

例え殺人事件が起ころうとも、関係なく研修は続きました。

この日は改善後の業務フローの確認する為、

何度か「鶴亀商事」へ行かなければなりませんでした。

「鶴亀商事」へ行く途中、広いホールに面した通路が有りました。

ホールの入り口や通路の両側には、良くドラマ等で目にする「黄色いテープ」が

張り巡らされていました。

黄色いテープを横目で見つつ、しかしながら私達にとっての「現実」は、

鶴亀商事の業務改善であって、この黄色いテープは「非現実」だと感じられるぐらい

研修にのめりこんでいました。

 

テレビカメラも来ていました。

殺人現場付近の通路を、スーツを着て、ノートや大きな模造紙を抱えた

サラリーマン数名が、マジメに表情ひとつ変えずに早足で行進している姿が、

もしテレビで放映されたとしたら、さぞかし異様な光景に映った事でしょう。。。(笑)

 

 この姿は、株式会社Mをとても良く象徴していると思います。

社内で起こる事が何よりも重要な「現実」で、世間で起こっていることは

大して重要と思わない。

社内で決まった事は、がむしゃらに実行しようとする会社。。。

 でも、良く考えると多かれ少なかれ、会社というか人の集団というものは

そういう側面が有るものなのかも知れませんね。。。

 

研修の方は予定通りに終わり、プレゼンもうまく行き。

研修が終わる頃には、チームのコミュニケーションもうまく回る様になり、解散するのが勿体無いぐらいのとても強力なチームになりました。(まあ、プロジェクトリーダークラスの集団だから当然と言えば当然なのですけど)


 3日目の研修を終えて、非常に充実した気分を味わいながら、

私は東京へ帰ったのでした。。。