shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

社外へ! (今はなき株式会社Mの物語 14/16)

 10年生を過ぎた頃、私は社内の破綻プロジェクトを転々としていました。

 

地位的には「主任」であり、数々の成功プロジェクトの経験者として、

みんなから一目置かれる存在にはなっていたと思うのですが、

「誰にでも優しい(≒甘い)人、何でもやってくれる人」

みたいなイメージが付いてしまったようで、みんなが嫌がるプロジェクトに

投入される事が多くなりました。

 

大きなプロジェクトなのに、リーダーの打つ手打つ手が裏目に出てしまって、

すっかりメンバーの信頼を失ってしまい、延々とデスマーチを繰り広げている

プロジェクトとか、誰も嫌がる怖くてひたすら我がままなお客さんの所へ行くとか、

プロジェクトリーダーの間で、たらい回しにあってしまったメンバーをまとめて

担当するとか。。。 (^_^;

今から考えると、かなりムチャぶりをされていました。

そんな無理プロジェクトを、一つ一つ何とか無事に着地させる事に取り組み、

まずまずの成果を上げていました。

 

「shobuno、協力会社にシステムのある部分の開発を依頼したんだけど、

 一ヶ月経っても音沙汰が無いんだよ。」

「えっ?(嫌な予感。。。)」

「納期は半月後なんだよね。。。」

「そ、そうですか。。。どうして今まで放っておいたんです?」

「まあ、ちょっと、行ってきてくれない?」

「(嫌だっ!!)。。。。は、はい。」

新宿御苑の近くに、その協力会社さんのオフィスはありました。

年配のオジサンが責任者で、5,6名の若いバイトによる開発チームでした。

進捗を聞いてみると、予想通り殆どできていない! (涙)

 

(私)「どうするんです?」

(オジサン)「済みません、徹夜で仕上げます!」

(私)「それで出来るんですか?」

(オジサン)「死ぬ気で頑張ります!」

(私)「。。。ううう」

 

 リーダーに報告すると、「終わるまで帰って来なくていいから」という冷たいお言葉。。。(涙)

仕方ないので、その会社のデスクを借りて、開発を見守る事にしました。

始めの頃は、「監視役」の私を煙たがって殆ど会話も無かったのですが、

彼らの会話が耳に入ってきて、

「そこは、こういう風に組むと出来ると思いますよ。」

とか助言をしているうちに、だんだん打ち解けてきて、

最後は、すっかりその会社の一員の様になってしまいました。

納期までの半月間、殆ど家に帰ることも出来ず、

その会社の床で寝たりして、みんなで頑張りました。

いつの間にか開発の一部を手伝ったりしていました。。。(笑)

 

納期通り開発が無事に終わった時は、嬉しくて嬉しくて

協力会社のみんなで

「やったー!」

と喜び合って祝杯を上げたりしました。。。

 

 

 

 13年生のとき、大きなシステム開発会社Xから仕事の依頼がきました。

X社では、ある巨大なプロジェクトの一部の開発を引き受けていたのですが、

開発が全然上手くいっていなくて、助けて欲しいという事でした。

担当していたX社の部長さんは、上手くいかない開発に悩み、日々悪夢を見る様な

状態だったそうです。

 

株式会社Mの営業Aさん「それなら、ウチにうってつけの人材がいますよ!」

 

。。。多分そんな経緯が有って(迷惑な話だ。。。)、

私が投入される事になりました。

私は表向きはX社のサブリーダーとしてふる舞う様に言われました。。。

 

入ってすぐ、他社が作っていたシステムの基幹を成す「フレームワーク」と

呼ばれていた共通システムがバグだらけで使い物にならない事を発見し、

巨大プロジェクトの上層部に文句を言って、修正してもらいました。

何とかシステムが動き出した頃に、M社のメンバー18名を増員してもらって、

本格的な開発に入りました。

 私が弾きだした見積では、18名全員が連日夜中の11時まで頑張って、

3ヶ月で遅れが取り戻せる計算でした。

 

(私)「3ヶ月で追いつけると思います。」

(X社部長)「ホントですか!? よろしくお願いいたします。」

 

当時、私には、ほぼ完璧にプロジェクトの進捗が分かる自作のシステムが有りました。

(特許出願中)そのシステムを駆使して、人のやりくりを工夫して、

メンバーにガンガン仕事をさせて、何とか約束通り、開発を完了させました。

 

X社部長は大喜びで、

「助かりました! 悪夢から解放されました。

 今度は、他のサブシステムも担当して下さい!」

と言われ、気がつくと私は、その巨大プロジェクトでのX社全体の

プロジェクトマネージャになっていました。。。(苦笑)

(総勢4〜50人ぐらいかな?)

 

あれよあれよと言う間に、私の担当する仕事のスケールが大きくなりました。

 

 X社は有名な大きな開発会社でしたが、今回のプロジェクトは数百億円規模の、

本当に巨大なプロジェクトで、開発の中心になっている会社は、

世界規模の巨大なシステム会社でした。

その下に、錚々たる巨大な開発会社が名を連ねていました。

その中から見ると、X社は弱小な方だったと思います。

 

開発は、全体的にみると芳しくありませんでした。

スケジュールは遅れに遅れていました。

特に基幹システムの出来が悪くて、検索条件を入力して「検索」ボタンを押して

結果が出るまで、1時間30分もかかってしまう様な状態でした。。。

 

(メンバー)「これじゃあ、テストも出来ません!」

 

(私)「検索ボタンを押すとさあ、「どの映画を見ますか?」という画面が出て、

    映画を選んでもらって、検索中に見てもらうっていうのはどう?」

(メンバー)「それ、良いっすねぇ!(笑)」

 

 毎朝、各社のリーダーが集められて、ミーティングをしていたのですが、

連日、開発部長(超巨大会社)の怒号が鳴り響いていました。

「◯◯社さん、一体いつになったら☓☓システムの開発が終わるんだ!?

 いい加減にしろ!」

とか、

「◯◯社さん、仕様が間違っているから直せって言っているでしょう!?

 何回言ったら分かるんですか?!」

とかそんな感じで、各社のリーダー達は連日震え上がって小さくなっていました。

 

開発部長は、口調は厳しかったですが、言っている事は正しく指示内容は適切で

密かに立派な開発者だと思っていました。

 

 ある日、その開発部長からX社の私宛に、遅れている他社のシステムの応援に

人を出せという依頼(命令?)が来ました。

これを受けてしまうと、X社の開発が半月遅れてしまう。。。

私はX社の部長にその旨を報告して、開発部長とケンカになってしまうかも知れない

けど、そのまま伝えて良いかと聞きました。

X社の部長は、OKと言ってきました。。。

 

 翌朝、朝ミーティングの時間になりました。

私は、開発部長がいつも座っている席に一番近い真ん前に座りました。

真っ向勝負の姿勢です(笑)

会議が進み、例の話題になりました。

(部長)「X社さん、例の人出しの件だけど了承してもらえる?」

(私)「はい。そうしますと、ウチの開発が半月程遅れてしまうと思いますが、

    それで宜しいですか?」

「遅れる」という言葉を、開発部長が許す筈がありません。

見る見る顔に怒りの色が浮かんできました。

(部長)「何言ってんの? あんた、そんな訳ないでしょう?

     どういうつもりでそんな事言っているんだ!?」

 

部屋の雰囲気は凍りついていました。

他社のリーダー達は息を飲んで見守っていました。

 彼の予想通りの怒りの表情を見ると、私の気持ちは

どんどん冷たく落ち着いてきました。

冷たい怒りは良い。コントロールできるから。。。

 

もう一歩、踏み込まなければなりません。

(私)「ウチもギリギリでやっているんです。

    現状納期ギリギリで進めているのですから、人を外せば単純にそれだけ

    遅れが出るんです。私の計算では求められている人数を出せば、

    このように半月の遅れになってしまうんです。」

(部長)「それは、X社としての解答か?!」

(私)「はい、そうです。ただ、どうしても半月遅れると言っているのではなく、

    現状の開発規模ならばという事です。

    もし、弊社の増員が許されるのであれば、X社の部長に相談し検討する事も

    可能でしょう。そういう事であれば相談しますが。。。」

(部長)「X社の部長に今の話を言っても良いのだな?」

(私)「はい、勿論。増員等のご相談であればいつでもお受けすると思います。」

(部長)「わかった。。。」

 

 部長の目を見て、淡々と話しをする私に開発部長はだんだん勢いが無くなり、

結局私の思う通りに話は落ち着きました。

 

 

 開発が終わりシステムが運用されても、しばらくこの朝ミーティングが行われ、

連日発生するシステム障害(各社100件以上ずつ)に対する叱責の場になりました。

しかしながら、唯一X社だけはミーティングが行われた1年間、システム障害ゼロでした。

 

 開発の打ち上げパーティの時、私とX社の部長で談笑している所に、

この開発部長が、わざわざやってきました。

「うわ、何か言われる。。。(汗)」

とビビっていると。。。

 

(開発部長)「この度は、本当に助かりました。ありがとうございました。」

(X社部長)「いえ、こちらこそ、本当にありがとうございました。」

(開発部長)「shobunoさん! あなたは本当に素晴らしかった。。。」

(私)「えっ??」

(開発部長)「いつぞやのミーティングの時、いつも大人しいあなたの顔が

       般若(はんにゃ)の顔に見えましたよ(笑)

       あの時は、本当にびっくりしましたし、

       素晴らしい対応だったと思います。。。」

 

 

いえいえ、あなたならきっと正しい判断が出来ると信じられたから、

だからあんな風に言ったのですよ。。。

私は心の中で、そうつぶやきました。

 

 

社内の開発から、大規模な社外開発の取りまとめを経験し、

仕事はますます面白くなってきました。