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shobuno's blog

shobunoの日記です。日々見たこと、考えたこと、思い出した事などを興味の向くまま書いていきます。

株式会社Mのいちばん長い日 (今はなき株式会社Mの物語 15/16)

某年2月1日 昼 大阪

 

バーン! 

 

突然大きな音がして、事務所のドアが開け放たれました。

10数名の男がドカドカとフロアになだれ込んできました。

一人の男が大声で叫びました。

 

「机の上の物に手を触れるな!!」

 

その時、事務所には100人近くの社員が仕事をしていましたが、

いきなりの大声に、誰かが立ち上がって、

 

「どういうことだよっ!?」

と怒鳴りました。

 

押し入ってきた男に詰め寄って、フロアは一時騒然となりました。

そこに、社長が事務室に入ってきました。

 

押し入ってきた男達が口々に大声で、

 

「◯◯(社長の名前)! お前はもう、社長じゃない!

 さっさと、ここから出ていけ!」

「そうだ! 出でいけよっ!」

 

男たちにはやし立てられながら、

社長は男たちの声に殆ど反応を示さず、静かにそこを立ち去りました。

 

 

某年2月1日 昼 東京

 東京の事務所は、とある超高層ビルの一角にありました。

その時、超高層ビルの1階ロビーには、数名の男たちが待機していたそうですが、

事務所に乱入してくる事はありませんでした。

 

 

時間は遡って、某年12月。。。

 社長の持株が、50%を割っているらしいという話が上司を通じて伝えられました。

今から15年前、今の社長と元社長(現会長)が経営方針を巡って争い、

元社長は負けて会長職に退きました。

それから15年。。。

会長は、殆ど会社に出社する事はありませんでした。

私が研修生時代、「会長室」をピカピカに掃除していましたが、

その部屋の主に会う事は有りませんでした。

東京メンバーの若手などは、恐らく一度も顔を見た事が無かったに違いありません。

 

 その会長ですが、会社の創業メンバーの一人という事で、

会社の株を持っていました。

社長と会長は、半分ずつ株券を持ち合う様に取り決めていたらしいのですが、

原因は良く分かりませんが、気がつくと会長の株の方が僅かに多いという状態に

なっていたそうです。

社長はそれに気づき、株を買い戻したいと会長側に持ちかけたそうですが、

会長側は承諾しませんでした。

 

それどころか、2月に株主総会を開いて社長を解任し、新しい社長を任命したいと

言い出しました。

15年間鳴りを潜めていた会長のクーデターでした。

 

社長がクビになるかも知れない。。。

社内は不安に包まれました。

 

不安な気分のまま、年は暮れて明け。。。

それでも情勢は変わりませんでした。

何度か持たれた交渉の場も決裂し、社長の解任は避けられない情勢になり。。。

 

 

 

某年1月31日 夕刻 東京

 

会長の息子さんが、大阪でゲーム会社を運営していて、その人達が

株式会社Mを監視しているとかで、彼らに見つからない様に

密かに、東京の社員が全員大きな会議室に集められました。

東京の本部長から、もはや社長の解任は避けられない事、

社長が解任させられた後の事について話が有る事が告げられました。

 

社長が解任したら、同時に現職のマネージャ(部長クラス)の半分は退職する。

このメンバーで新しい(システム開発)会社を立ち上げる。

残った半分のマネージャは、今携わっているお客さんに事情を説明し、

社員を徐々に退職させて、新しい会社に送り込む。

全ての社員が新しい会社に移ったら、マネージャ達も退職して新しい会社へ行く。

私達は全員退職願いを書いて、上司に渡しました。

 

まさか。。。?!

こんな大きな会社に、こんな事が起こるなんて。。。

余りの事に現実感が沸かず、なんだか夢を見ている様な気分でした。

 

こうして、翌日の2月1日。冒頭のシーンに続きます。。。

 

 社長の解任後、新しい社長(名前も覚えていないや (^_^;)がやってきて、

会社は見かけ上それ程大きな変化が有った様には見えませんでした。

ああ、そうそう。一つだけ、給与体系を見直すとかで、在籍年数に応じて

大幅な給与アップが有りました。10年未満は10万円、20年未満は20万円、

それ以上は30万円アップです!

私は20万円も月給がアップしました。。。(^_^;

これは、社員の引き止め策だったのか、

或いは辞めていく社員への退職金だったのか。。。?

 

 社員の大移動作戦の方は着々と進みました。

程無く新しい会社(M'としましょう)も出来ました。

事務所に残る社員は、見る見るうちに減っていきました。

誰も残ると言う人が居なかったのは、さすが株式会社Mというしか有りません。。。

 

 

フロアから社員がどんどん居なくなるのを見て、私は違和感に苦しみ始めました。

 

何か間違っている気がする。。。

確かに会長のした事は正しい事ではないけれども。。。

こんな風に結託して、社員を新しい会社に移動するやり方は正しいのだろうか?

自分はこのまま新しい会社に行っても良いのだろうか?

 

私は、株式会社Mが好きでした。

何も無かったら、一生そこで働きたいと思っていました。

単に目の前で、株式会社Mが破壊される事に反発を感じていたのかも知れません。

私がもしマネージャの一人だったら、恐らく何の迷いもなく、

社員を新会社へ送り込む仕事を一所懸命やっていたに違い有りません。

(それが社員を救うことになると信じて)

でも、あの時私はマネージャでは有りませんでした。

守るべき社員を抱えていませんでした。

私は私の判断で、自分の行動を決めても良いんだという事に気づきました。

 

それに気づいた時、私の(恐らく)人生最大の悩みが始まりました。

このままM'へ行ってしまって良いのか?

でも、今のこの強引な社員を移動するやり方は正しくないと思う。

経験上、「正しくない事」は長続きしない事をMで学んだ筈だ。。。

Mの考え方に忠実であるならば、M'に行くべきでない筈だ。。。

M'に行ったら、恐らく一生このままだ。。。

むしろ、新しい事を始めるチャンスではないのか?

でも、家族もいるし、M'の収入は安定しているし。。。

やっぱり、M'に行った方が良いのかも。様子を見てダメならそこで考えても。。。

(。。。。最初に戻る (苦笑))

 

何度も何度も、ぐるぐるぐるぐる同じ事ばかり考え続けました。

1ヶ月程悩み続けて、結論は出なくて。。。

悩む事にも疲れてきて、最後は直感に従いました。

 

M'に行くのはやめよう。。。

 

 

私はかつてお世話になったお客さんの部長さんに、

今の悩みを相談しました。

部長さんは、とても親身になって話を聞いて下さり。。。

或る会社を紹介してくれました。

私は、そこへ行く事に決めました。。。

 

 

 私はM'へ行かないと上司に告げると、上司はとても怒りました。

「折角お前の為に新しい仕事を用意してやっているのに、何だと思っているんだ?」

「申し訳ありません。でも、どうしてもM'に行けないのです。」

 

 

 私が株式会社Mを辞め、程なくして株式会社Mの社員数はゼロになりました。

当時株式会社Mの業績は非常に良くて、社内にキャッシュが10億円程有ったと聞いています。

350人ぐらいのマジメな社員達による強烈な会社でしたが、

或る個人の思惑一つの為に一瞬で何もかも消滅させられてしまいました。

「会社は株主のもの」

と言いますが。。。何ともやるせない思いが残ります。。。

 

 

その後、株式会社Mは、しばらくホームページが残っていましたが、

数年後にはそのホームページも無くなってしまい、どこにも無くなってしまいました。

 

 

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写りは悪いんですが、手元に残っている株式会社Mのフロアの写真。

荷物整理の為に、最後に会社に戻った時に撮影したもの。

ちょっと前まで沢山いたのに、もうフロアには誰も社員はいませんでした。

 

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外は高層ビルの夜景が美しく広がっていました。