2006年発表、2009年文庫化、2013年8月には、湊かなえの「告白」の254万部を越え、
文庫部門1位の売上を記録。 2013年12月には300万部を突破。そして映画化。。。
大ヒットのこの作品、「永遠の0」ですが、
先日通りかかった本屋さんの平置き棚から私に「おいでおいで」していて、
どうしても断りきれずに(苦笑)、読むことになりました。
でも、この作品って零戦とか戦争を賛美した作品っぽいなぁ。
いわゆる「戦争モノ」って、戦争を美化したものも、戦争の悲惨さを殊更に
強調して微に入り細に入り表現するものも、どっちも苦手なんだけどなぁ。。。
(じゃあ、どうして読むんだ? (^_^;)
家に帰り、本をバッサリと断裁して、スキャナにかけて、
いつも持ち歩いているiPadに取り込みました。
で、先日の金曜日の朝の電車で読み始めたのですが。。。。
いや、もう、あんまり面白いのでびっくりしました。
冒頭からグイグイ引きこまれてしまって。。。
移動中の電車の中、休憩中、そして帰宅後の家で読み進めて、
その日のうちに、575ページを一気読みしてしまいました(まだまだ若いな、自分(笑))
現代、26才のニートになりかけている若者(健太郎)と出版社に勤めている姉が、
ふとした事から、自分のお祖父さんが、血の繋がったお祖父さんでない事を知ります。
本当のお祖父さんは零戦乗りで、戦争末期に特攻で亡くなった事を知ります。
主人公は、お祖父さん(宮部久蔵)について調べる事になり、当時の戦友達を探して、
彼らから、宮部久蔵の生涯について話を聞く事になります。
しかし、元戦友達の話は、健太郎が想像していたものとは違ったものでした。
「奴は海軍航空隊一の臆病者だった。」
「彼はなによりも命を惜しむ男だった。」
「あいつは戦場から逃げ回っていたんだ。」
「勇敢なパイロットではなかったが、優秀なパイロットだった。」
仲間から「臆病もの」と蔑まれた彼、妻と子のために絶対に生きて帰るんだと
言っていた彼が、何故、特攻を志願したのか?
こんな風にお話は進んでいきます。
とても読みやすい文章、自然な感じでありながら、的確で無駄のない表現で、
冒頭、物語の世界に入るのに抵抗感が無い感じ。。。
作者の並々ならぬ力量を感じさせられます。これでデビュー作なんですよね。
宮部久蔵が登場する戦時中のシーンも、この調子で文章が進むので、
妙に現代的というか、違和感なく当時のシーンを身近なシーンの様に感じる事が
できました。(電車で、何度も泣きそうになって困った。。。(^_^;)
ですから、こう考えざるを得なくなります。
「自分だったら、どうするんだろうか?」
軍隊という組織の中、軍隊の「正義」の中で、宮部久蔵たちは生きていました。
「お国の為に自分の命を投げ出すのはあたり前。」
「特攻で死ぬのは、喜ばしいこと。」
本心はそう思っていなくても、そう言わなければ「正しく」ない人になってしまう。
「ホンネとタテマエ」が、ハッキリと存在する社会、組織。。。
口にした「タテマエ」の通りに、
本当に自分が「喜んで」死ななくてはいけない社会。。。
本当に恐ろしい事だと思います。
宮部久蔵の物語は、読んで頂くとしまして。。。
比べ物にもなりませんが、今から思うと軍隊的な会社(苦笑)に勤めていた時があり、
あの頃、「どう考えてもおかしいでしょう」という会社の「常識」と、
自分の「感覚」とのギャップに苦しみ、それでも何とか「自分」を貫こうと
あがいていたあの頃の事を、ちょっとだけ思い出してしまいました。
2013年、この作品がヒットしたのと同時期に公開された映画、
「風立ちぬ」という作品があります。
零戦を作った人、天才技師 堀越二郎の生き様が描かれているアニメですが、
「零戦の悲惨さ」がイマイチピンときませんでした。
この「永遠の0」と「風立ちぬ」を合わせて鑑賞すると、より良いんじゃないかと、
(作家同士は反発し合っているみたいですが (^_^;)思います。
映画も評判が良いらしいので、そのうち観たいですね。
(★★★★☆ 星4つ)